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1. この資料の目的

私たちはアプネアで水槽内パフォーマンスを行っています。
そのため、亀に衣装や髪を噛まれる行為は、単なる接触事故ではなく、溺水・意識消失・生命危険につながる重大リスクです。
一方で、観客前で亀を蹴る・叩く対応は、動物福祉上も対外印象上も不適切です。
したがって本記事では、「出演者の命を守ること」と「亀を乱暴に扱わないこと」を両立する対応を統一ルールとして定めます。


2. 基本方針

亀が衣装や髪を噛んだ場合、最優先は出演者の呼吸確保と離脱です。
ただし対応は、蹴る・叩く・引きちぎるではなく、落ち着いて制御し、安全に離すことを原則とします。

また、海亀は外見上とても丈夫に見えますが、扱い方を誤ると傷害や強いストレスを与えます。
公式ガイドでは、フリッパー(ヒレ)で持ち上げない、鋭利な器具を直接当てない、ひっくり返さないことが明確に推奨されています。ISSF Guidebook NOAA


3. 噛んだ亀を安全に離す方法

3-1. 絶対にしてはいけないこと

亀を蹴る、叩く、殴る、髪や衣装を力任せに引き抜く、ヒレを引っ張ることは禁止です。
また、公式の海亀取扱指針では、鋭利な器具を直接亀に当てて制御しないことヒレで持ち上げたり引きずったりしないこと仰向けにしないことが示されています。NOAA ISSF Guidebook

3-2. 現場対応の基本原則

亀に噛まれた本人は、パニックで暴れないことが重要です。
強くもがくと、髪や衣装の絡みが悪化し、呼吸復帰までの時間が延びるおそれがあります。
対応は本人単独ではなく、必ずバディが介入します。
大型個体の扱いでは、3~4人での対応が推奨されるほど、海亀は力が強く、特に前肢まわりの力が大きいとされています。

3-3. 水中での解除手順(研修用たたき台)

① 噛まれた本人は「停止・合図・気道確保優先」
噛まれた瞬間は、まず大きく暴れず、事前に決めた緊急合図を出します。
最優先は「見栄え」ではなく、水面復帰または安全位置への移動準備です。

② バディは先に“人”を守る
バディはまず、噛まれた出演者の姿勢を支え、浮上経路・顔まわり・移動方向を確保します。
アプネア事故では、救助の初動時間が生存率に大きく関わるため、人命優先で即介入する体制が必要です。DAN

③ 解除は“亀の頭正面”ではなく、側方~後方から制御する
解除を担当するスタッフ/バディは、可能であれば亀の側方またはやや後方から接近し、亀の動きを落ち着かせながら制御します。
NOAAでは、海亀の制御時は甲羅の前後または左右を保持し、必要に応じて甲羅とフリッパー基部を支えるように抱えることが推奨されています。NOAA

④ 解除後は、すぐ再接近させない
離れた後は、亀を出演者から少し距離のある位置へ誘導し、噛まれた側はただちに呼吸回復・安全確認に入ります。
必要であればその回の演技は中断し、**「続行できるか」ではなく「安全に終了できるか」**で判断します。

3-4. 水面上・陸上補助時の安全ポイント

水面上やバックヤードで扱う場合、公式資料では甲羅の左右、または前後を持つことヒレで持たないことが基本です。NOAA
また、大きな個体では前肢近く(肩付近)の制御が重要で、フリッパーの力で作業者がバランスを崩す危険があるとされています。WIDECAST Husbandry Manual

さらにNOAAでは、亀を落ち着かせる方法として、目や鼻孔をふさがずに頭頂部へやさしく手を置く方法が紹介されています。
これは「叩く」のではなく、刺激を増やさず静かに制御する考え方です。NOAA


4. 亀の丈夫さの説明

4-1. 亀は“強い”が、“雑に扱ってよい”わけではない

海亀の甲羅は、上側のcarapace(背甲)と下側のplastron(腹甲)からなり、内部では骨板が肋骨と融合し、外側は**ケラチン質の鱗板(scute)で守られています。
Smithsonianは、これらのscuteについて
「硬く、かつ脆すぎない柔軟性を持つ」**と説明しています。つまり、海亀は確かに防御力の高い身体構造を持っています。Smithsonian Ocean

4-2. ただし、力も強い

海亀はとくに前肢の力が強く、大型個体ではその動きで作業者が体勢を崩すことがあります。
WIDECASTの飼育マニュアルでも、前肢の力が主であり、拘束や保持はそこを意識すべきとされています。WIDECAST Husbandry Manual

4-3. 丈夫でも、叩いたり乱暴に扱ってはいけない理由

甲羅は強い一方で、ただの「硬い板」ではありません。
Smithsonianは、海亀の甲羅には触圧を感知する神経が走っていると説明しています。
また、WIDECASTでは、不適切な拘束により上腕骨損傷の危険があること、NOAAでは仰向けにすると呼吸に悪影響を与えることが示されています。
したがって、「丈夫だから叩いてよい」ではなく、丈夫でも生体であり、乱暴な刺激は避けるべきという理解が必要です。Smithsonian Ocean WIDECAST Husbandry Manual NOAA


5. バディシステムの大切さ

5-1. アプネアでは「一人で対処しない」が絶対原則

Divers Alert Network は、重大事故が起きた事例として、one-up-one-down の基本ルールが守られなかったことバディシステムを回避したことを挙げています。
また、**Never dive alone(絶対に単独で潜らない)**とも明記しています。DAN

5-2. マーメイドショーでの意味

ショー中のバディは、単に「一緒に入る人」ではありません。
異変を先に見つける人、噛みつき時に介入する人、浮上補助をする人、呼吸回復まで見届ける人です。
演技中に髪や衣装を噛まれた場合、本人は酸素節約と姿勢維持で精一杯になるため、第三者の即応が生死を分けますDAN

5-3. ショー向けの実践ルール

DANは毎セッション前に、ブリーフィング、役割分担、緊急対応計画を確認する重要性を述べています。DAN
その考え方をショー運用に置き換えると、最低限、次の内容を毎回確認すべきです。

確認項目内容
監視担当誰が常時バディ監視をするか
緊急合図噛まれた/浮上したい/中断したい のサイン
解除担当誰が亀への一次介入をするか
浮上補助誰が本人を水面まで補助するか
水面対応誰が呼吸確認・回収をするか
中断判断誰が演技中止をコールするか

5-4. バディシステムの社内メッセージ

「見守る人がいるから潜れる」
これをチーム共通認識にすることが重要です。
パフォーマーの技術が高くても、亀の接近・噛みつき・絡みつき・軽度パニックはゼロになりません。
だからこそ、上手い人ほどバディを軽視しない運用が必要です。


6. 現場掲示用の短縮版

亀対応 3つのルール

1. 噛まれたら、一人で対処しない。
暴れず、合図を出し、バディ介入を待つ。

2. 亀は蹴らない・叩かない。
離すときは、落ち着いて制御し、乱暴に扱わない。
ヒレを引っ張らない、鋭利な物を使わない、仰向けにしない。NOAA ISSF Guidebook

3. バディは演者の命綱。
アプネアでは、異変の早期発見と即介入が最優先。
単独対応は禁止。DAN


7. ルール

亀は丈夫だから乱暴にしていい、ではありません。
強いし力もある。でも、こちらはアプネアで命がかかっている。
だからこそ、叩くのではなく、安全に制御する。単独で頑張るのではなく、必ずバディで守る。
これが私たちの安全ルールです。

触る場所:甲羅の横、または甲羅の前後。必要なら甲羅+フリッパーの付け根を支える。
触らない場所:口先、髪や衣装を咥えている部分を力任せに引く、ヒレ先、目・鼻。 NOAA ISSF Guidebook

安全に離すために亀へ触るなら、口ではなく甲羅。持つなら甲羅の左右か前後。必要なら頭頂部にやさしく手を置いて落ち着かせる。ただし目・鼻は塞がない。ヒレを引っ張らない。基本は、口元ではなく甲羅をコントロールするという考え方です。

この図では、緑が触る場所赤が触らない場所です

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